中島みゆきが再び映画館に帰ってくる。それが「歌姫 劇場版」である。

中島みゆき初の”映画館公演”となった「歌旅劇場版」は、かなりの成功に終わったようだ。
考えてみれば、彼女にとって唯一のコンサート映像でもある「歌旅」を映画館の大画面、大音量で見ることが出来る。しかも、歌っている彼女を存分に堪能して欲しいと、ツアーの記録でもあったオフショット部分をカットした、100%ライヴ映像作品という新作同様に再編集したものだったのだから歓迎されないはずがなかったかもしれない。最近、縁のなかった映画館に久々に出向いていって、座席や音響など最新設備の立派さに驚いたという方も多いに違いない。
一回目の成功があれば次がある、というのは、どこの世界も同じだ。中島みゆきが再び映画館に帰ってくる。それが「歌姫 劇場版」である。

上映されるのは、「歌旅」とともに歌っている中島みゆきを記録している「中島みゆきライヴ! Live at Sony Pictures Studios in L.A.」である。2004年9月29日、30日、ロサンジェルスの映画撮影スタジオを貸し切って行われたスタジオライヴを記録したものだ。
中島みゆきにライヴ映像作品が少ない、ということについては「歌旅劇場版」の資料でも触れた。一期一会でもあるツアーでのライヴを完成形として一つの作品に残すのは不可能と言っていた彼女が、こういう形なら、と提案したのが、ロスでのスタジオライヴだった。
毎回レコーデイングで向かっているロサンジェルスでなじみのミュージシャンと一緒に演奏する。それは、彼女の音楽制作の日常でもある。それでいて一回限りのライヴが持つ非日常的な緊張感を伴ってもいる。自分の音楽をCDとは違う形で楽しんでもらうと同時に真剣勝負に挑む姿の記録にもなる――。
前回の「歌旅劇場版」は、ツアーの移動シーンなどのオフショットはカットされた再編集作品だった。中には、オフステージの彼女の表情をもっと見たかった、という人もいたかもしれない。「歌姫 劇場版」は、そうしたシーンも残している。どんなスタジオでどういうミュージシャンと一緒だったのか。その合間の素顔の彼女はどんな様子だったのか。海外に出ると、その人の本来の姿や有り様がより素直に現れるというのは、アーテイストでも例外ではない。今回はDVDの良さをそのまま生かしている。そういう意味では自宅のテレビと大画面との違いをより鮮明に感じ取る事が出来そうだ。

二日間の撮影で歌われたのは「この空を飛べたら」「地上の星」など7曲。そのハイライトが「歌姫」だった。映像として残されている「歌姫」はこれしかない。8分40秒に及ぶ熱唱は、この世のものとは思えないオーラと気品に包まれている。
ただ、「歌姫 劇場版」は、ロスでのスタジオライヴだけではない。これまでのプロモーション映像集がもう一つの柱になっている。いくつもの時代にわたって残されてきた作り込まれた音楽の映像はライヴでの彼女とは違うイメージへの旅に連れ出してくれるはずだ。
時を超えて歌う中島みゆき。締めくくりのサプライズとして思いがけない最新のライブ映像も用意されているようだ。大画面大音量で味わう中島みゆき。指の先からつま先や目の動きまで全身が表現体となった歌姫の一挙手一投足が見せてくれるもの。「歌姫 劇場版」の先に「夜会 劇場版」が待っていることを願うのは僕だけではないだろう。

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